BLUE GIRL
扉が閉まるとRyoは私の隣りに場所を移した。
「本当に良かったの?」
「良かったもなにもあんなの告白にも入れないでしょ。世の中の女の子が自分のトリコになると勘違いしてるのよ」
「…理子、膝枕して。眠い」
「少し寝たら帰るからね」
「うん」
膝にRyoの頭が乗る。
茶色の髪を撫でてる。
少し傷んだ髪は、シンガーソングライターとして踏ん張るRyoの虚勢のようだ。
傷ついた心を隠してRyoは歌い続けている。
多くの人々の支えになる歌を届けている。
「今夜もうちに泊まってもいいから、ちゃんと起きてね」
「ありがとう」
コーヒーを持って戻ってきたユウと目が合い、そっと触れていた髪から手を離す。
「ごめんね、ユウさん。僕、【BLUE GIRL】の主題歌が上手く書けなくて、あなたに八つ当たりしたかっただけだ」
目を閉じてはいたがユウの気配を感じたRyoは言った。
「曲が、歌詞が、なにも思い浮かばないんだ。このところ、ずっとね」
海に向けて多くのメロディーを紡いできたRyoは初めてのスランプに陥っていた。