BLUE GIRL
雪乃さんの怒りはユウが登場してもおさまらない。
「週刊誌、見ましたわ」
「どうも」
しっかり目を開けて寝不足であることを感じさせない清々しい雰囲気のユウではあるが、その態度は不機嫌そのものだ。
「まだ別れてなかったのですね」
「別れるつもりはないんで」
「…私、今夜、空いてますわ」
雪乃さんが腕を組むと、豊満な胸がより強調される。いつもよりメイクも濃く、美しさがより際立っている。
「おい、おまえ」
しかしユウは誘い文句に答えるどころか雪乃さんの隣りに立つ私を見て、更に不機嫌となり眉間にシワを寄せた。
「原田さん、ちょっと良いですか」
近くにいたユウ専属のヘアメイクさんを呼び、私の腕を引いた。
「ちょっと、なによ!」
「黙れ」
雪乃さんの視線が痛い。
これはなんと言い訳すれば?
ユウに引きずられるようにしてスタジオから控え室に戻った私は後から入ってきた原田さんと顔を見合わせる。
「ユウ、いったいどうしたの」
原田さんはショートカットが似合う30代の女性で、いつも機敏に動き回るキャリアウーマンだ。
「原田さん。こいつのココ、なんとかならない?」
ユウは自身の首を指す。
「あー、これね」
原田さんの視線が突き刺さる場所は、昨夜ユウに噛み付かれた首だった。
恥ずかしさに俯く。