BLUE GIRL

「ユウ、謝りなさい」


原田さんはユウの襟首を掴み、立たせる。
なんてパワーのある女性なんだ!


「うっぜー」


「良いから、謝る!」


まるで親子喧嘩を見ているようで、笑いを堪えた。


「俺のモノをどうしようと勝手だろ」


原田さんの手を振り払い、ユウは逃げるように楽屋を出て行った。




歯型に、"俺のモノ"発言。
残された私は恥ずかしさに原田さんと視線を合わせられない。


「もしかして無理矢理?」


気遣わしげな言葉に曖昧に笑い返す。



「ユウさんと付き合うことは承諾したのですが、さすがに歯型までは許可してないというか…」


「アイツが独占欲を見せるなんて、初めてだわ」


「独占欲?」


「そうよ。自分のモノだって示したかったのよ。あの子が執着する女の子…なんか感激だわ」


原田さんは嬉しそうに笑い、私の頭を撫でた。



「ユウにもやっと春が来たのね」


その言葉に、胸がチクリと痛んだ。


本当にユウが私を想ってくれたとしても、私は彼の気持ちには応えられない。


「あいつのこと、宜しくね。根は優しい奴なの」


「はい…」


原田さんの期待にも応えられずに、後ろめたい気持ちに支配された。

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