BLUE GIRL
スタジオに戻る途中の廊下で話し声が聞こえた。
曲がり角で足を止める。
「ユウさん!私を見てください」
雪乃さんがユウの行く手を阻み、必死に訴えている。
「あなたのことが好きです!」
「…よく言われる」
同じ女の子としてユウの返答は腹ただしい。
必死の告白にどうして向き合ってあげないのか。
「もしかして羅依さんに好意が?」
「ええ、その通りです。だからもう俺に構わないで」
「どうして羅依さんに…」
「退け」
「ユウさん、どうして私の気持ちに応えてくれないの?」
「ーーおまえのことは興味ないが、おまえの演技は好きだよ。尊敬してる」
それは雪乃さんへのユウの最大限の賞賛だ。
彼女は驚き、はにかんだ。
「私の海はどう?」
「原作に忠実で、儚い海のイメージを崩さない。おまえの涙に観客は惹きつけられるだろう」
「今はその言葉を聞けるだけで、十分ですわ」
「そうか」
初めてユウは雪乃さんに対して笑顔を見せた。