BLUE GIRL
手を握り返してくれた。
「これからも海のいない世界で生きなければならないおまえは、ずっと下を向いているつもりか」
感情的な行動に出た私とは反対にユウは落ち着いていて、抑揚のない声で言った。
「それは本当に海が望んでいることなのか」
「……海はそんなこと望まないよ。でも私は海のいない世界に慣れる自分が嫌なの。一生、海のことを思って、寂しく、やるせなく生きていく」
「無理だ。人は忘れるし、思い出は色褪せる。なにより心は変わる」
ーーあなたは何も分かってない。
他の誰かに言われたらそう返していたけれど、
お兄さんを亡くした悲しみを背負うユウには不適切な言葉だ。
「おまえが幸せになっても、それは海への裏切りではないよ」
ほら、あなたはやっぱり分かってる。
幸せを掴むことこそが、海への"裏切り"であるとセーブをかけているこの心をーー見透かしているようだ。