BLUE GIRL
ユウからのスズランのブローチを見る。
私の幸せの証だ。
「スズランの花言葉は、"再び幸せが訪れる"」
「え?」
「行ってきます」
高級腕時計を一瞥した母はバッグに荷物を詰め始める。
「行ってらっしゃい」
スズランの花言葉は知らなかった。
知った上でユウは贈ってくれたのだろうか。
慌ただしく出て行く母を見送り、ブローチを撫でる。
映画クランクアップの日、公園を後にした私たちはそのまま帰路に着いた。
甘い言葉ひとつなく、電車の中では終始無言で家まで送ってくれた。
けれど最寄駅から私の家までの間、ゆるく握られた手に心が満たされた。
「ユウ…」
会いたい。
そんな私の強い気持ちが伝わったのか、ユウからの着信音が響いた。