BLUE GIRL

そっぽを向いているユウは何も言わなかった。


「本気でユウのことを好きなの?」


「本気だよ」


「俺よりも好きなの?」


「Ryoへの好きとユウへの好きは別物だよ」


「ふぅ。困ったな…」


顔を上げたRyoは指輪に触れた。

迷った時や困った時に海とお揃いの指輪に触れることがRyoの癖だ。


「いや、良かったというべきか。おまえに好きな奴ができたんだもんな。喜ぶべきだけど、複雑だよ。もうおまえに膝枕を頼んだり、抱き締めてやることもできないわけだな…寂しいよ」


Ryoの悪気のない発言にユウの顔が僅かに強張った。



「もうそういうことは…遠慮しておくね」


「あーそうか、そうだよな」


頭をかいたRyoは、その手で私の頰に触れた。



「じゃぁ、最後に、これで本当に最後だから。僕のこと抱き締めて。ハグだよ、ハグ」


「……」


わがままを言う子供のようだけど、こういう時、私はなんの躊躇いもなくRyoの願いを叶えてあげていた。

けれど、もうーーそれはできない。



「ごめんね、Ryo」


頰に置かれた手をそっと剥がす。

ギターの弾きすぎで荒れた手に何度もクリームを塗ってあげたけれど、これからはその手に触れることすらしてあげられない。


私が選んだ道は、そういう道だからーー


< 190 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop