BLUE GIRL
帰り道、ユウと電車に乗る。
今度はしっかりと手を繋いで。
「最初から手紙を見せてくれていたら、すぐに私はユウを信頼してたと思うし、好きになってた。でもその好きは海に後押しされたからでなく、ちゃんと自分の意思であなたを選んだはずだよ。そしてきっと、海に嫉妬した」
「また嫉妬かよ」
平日の昼間のため乗客は少なく、隅に隣り合って座っている。
この車両には私たちと、子供連れの母親だけだ。
「だってユウの芸能界に居続ける理由が、海とお兄さんの約束のためでしょ?なんか、妬ける」
おもしろくない。
相手がいくら海だとしても、いい気持ちはしない。
「最初は賛成だった役者という仕事に対して、慶斗がいなくなってから母親は反対し始めた。兄弟共演が一生叶わないことに、母親が1番落胆しているのだと思う。俺の活躍を見ていい顔をしなくなった。父親は他界しているし、心の拠り所であった慶斗を亡くしてからはずっとひとりだった。マネージャーの甲斐(かい)さんだけが、唯一弱音を吐ける相手だったよ」
肩に重みを感じる。
ユウに寄りかかられ、これが彼なりの甘え方なのだ。
「でも今はおまえが居るから。すごく落ち着く」
「もっと甘えていいよ」
「兄と海のために芸能界を続けることに、おまえは賛成してくれるか」
至近距離でユウと視線が絡む。
繋がれた手は幸せの証。
私は、芸能人との恋に想いを馳せるような性格ではない。
むしろユウの魅力を独り占めしたい。
彼の手を、彼の唇を、
例え演技だとしても、
他の女優さんに触らせたくない。