BLUE GIRL

優しいひと


Ryoへの感想メールを打っている途中で、玄関のチャイムが鳴る。

仕事で忙しい両親は今夜も帰ってくる気配を見せない。


「こんばんは」


玄関先にギターを背負ったRyoが立っていた。


「昨日は本当にごめんなさい」


「なにしてたの」


「ちょっとしたスランプで。理子に八つ当たりした」


「海の誕生日はずっと2人で祝うって約束したよね」


"約束"という単語に、ユウの哀しげな顔を思い出してしまう。




「ごめんなさい」


「…いいよ、入って」


リビングにRyoを通してハーブティーを注ぐ。

昔はコーラばかり飲んでいたのに、喉のために最近の彼はハーブティーがお気に入りだ。


明るい茶色の髪はゆるくパーマがかけられ、耳に空いた無数のピアス。長時間のライブにも耐えられるように鍛え抜かれた身体。


真面目そのものだったRyoの容姿は変わってしまったが、ボロボロのギターと海とお揃いの指輪の位置だけは変わらない。

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