BLUE GIRL
「朝から体調悪かったのか?」
「最初は新幹線に酔っただけだと思ってたんだけど」
「昨日、俺が買い物に付き合わせたせいか?」
「違うよ。昨日はなんともなかったよ」
彼の優しさに気付いてしまえば、一言一言に思いやりが含まれていることが分かる。
困るな。
これ以上、優しくしないで欲しい。
ユウに恋するということは、
Ryoを裏切ることだ。
海のいない世界に残された私たちは、互いを裏切ることなんでできやしない。
「昼間も暑かったからな。無理しすぎだな」
「うん。慣れない日常で、頑張りすぎたのかも」
たかが18歳の素人が、映画に出演するという大役を任されて気が張っていたのだ。
この映画が撮り終わった時、私たちはひとつの目標を達成してしまう。
海の願いを叶えた後、私とRyoはどこへ向かえば良いのだろう。
「ゆっくり降りて」
「ありがとう」
タクシーを降りて病院の緊急窓口に向かう。
お釣りはいらないと言ってタクシー代を払ってくれたユウに支えられるようにして歩く。
「私、重いよね」
「別に。おぶってやっても良いよ」
「恥ずかしいから遠慮しとく」
ユウが雪乃さんを抱いて部屋まで連れて行った時に、巻き起こった感情はたぶん、嫉妬だ。