**零れる涙**
私がバックを持ち下に行けば、お母さんは、リビングにいた。

ただ、黙ってお茶をすするお母さんの後ろ姿に、さっきの気迫は無かった。


「お母さん、ばいばい」


お母さんは、振り向いてくれない。


「カンナ、行こう」


何が正しいなんて分からない。

正しいことなんてない。

それが、悲しい。

軋む玄関。


振り向いてもくれない母の顔。


怒った顔。

それが最後だった。


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