**零れる涙**
「進、なんでお前がここにいる」

体のふらついた真っ赤な顔をしたおじさんは、進くんを睨みつけた。

酔ってる?

そう、おじさんが喋る口から異様なまでのアルコールの匂いがした。


「なんでそうなんだよ、あんたは……。

酔わなきゃいい人なのに、いつも"それ"のせいでどんだけ辛い想いしてるか分かる?

出てけよ。
父さんなんか、嫌いだ‼」


君の叫んだ声は、私に響く。

私が言われた訳じゃないのに、悲しくなる。

「すまなかった」



ただ、そう言い部屋を出ていくおじさん。

この二人に溝を作ったのは、間違いなく私だ。


「…………っ」


止まらない涙。


私は、涙を抑えられない。

悲痛にも、治まってはくれない。


ふわり、と抱き締められた感覚に気づいた。

相手は優しく微笑んだ。

こんな状況に笑える進くん。
私の為に笑ってくれてる、と知ってまた涙が込み上げる。

「進くん………っ怖かった怖かったよぉ」



私は進くんに抱きついて泣いた。





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