**零れる涙**
ガタンっ


君を抱き締めたのは、私ーーー。

少しだけ、戸惑いを含んだ彼は……


「……………っ………カンナ…」


私の腕の中で泣いた。

きっと誰よりも、辛かった。

母親は、出ていった。

進くんを残して、出ていった。

そして、進くんのお父さんが私を襲った。

「なんで、父さん………なんでっ」


一番、辛い、寂しい時ーー母親がいない。

信頼していたお父さん。
信用を無くしたお父さん。

進くんは、きっとあの夜……誰よりも、悲しくて泣きたかった筈。

だけど私が泣くから、我慢していた。

「私のいる場所は、いつでも泣いていいよ‼
私、見てないから‼」

君を抱き締めて口にした言葉。

うん、見てないから泣いてもいいよ。

私は、君を抱き締めた。


君が、私を強く抱き締めた。

私は、一生……この人の支えになりたい、と思った。


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