**零れる涙**
電車を降りて、向かった先は……進くんの家。
14時か。
「まだ、父さんはいないな。
いつも仕事で………………ッ、カンナ、あれ」

途中区切る進くんの声に振り向いたら、近所を走るお父さんと、お母さん。

なんでーーー?

額に汗を滲ませながら、二人は走り回っていた。

それがフトッ、私を見た。
「カンナッ!!」

お母さんーーーー?

顔を歪ませて私を見るお母さんは、私に駆け寄ると抱き締めていた。

「ごめんね、カンナッ。
ずっと、言えなくてごめんね、カンナっ」

お母さんが、泣いてるーーー?

「お母さん、私………おばあちゃんに会いに行ったの。
私…聞いたの。
大嫌いなんて、言ってごめんね。
私は、お母さんが大好きだよ」


やっと言えた。

言いたかったこと、言えた。
「カンナ、大好きっ」

伝わった……。
伝わらない愛なんてない。
だからーーーー。



「お父さん、私はお父さんが怖かった。
だけど、父親なんだよね?
私…ずっとずっと会いたかったよ。

会いたかったの。
そこに、嘘はないよ。
だからーーー、ちゃんと話したい」

前置きは長くなったけど、

そう、ずっと会いたかった。
死んだ筈の父親が、目の前にいる。

出会えたことは、奇跡なんだよ。


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