**零れる涙**
また、入り口を見たら子供はいなかった。


誰かが気づいた様子はない。


俺はその足で、女の子を探した。

廊下も、ナースステーションにさえいない。


「還して‼
あの子を還してよぉ!!」



ナースステーション前で泣く女の人。

まだ、20代後半ぐらいの人。

若い筈の彼女は、奇声を発していた。



その姿をいつ居たのか、五歳の女の子が見てた。


黒い髪は、細く色の白い女の子。

小さな手には、ウサギのぬいぐるみ。


"ママ…………"



その声を聞いた。


だけど、彼女は泣くばかり気づかない。


なんで?

側にいるのに気づかないなんて、まさか。


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