**零れる涙**
「泣かないで、俺の愛しい人……」



えっ………?



君の声が聞こえる。



生の声がした。



床に座り泣く私の体が、フワリと抱き締められた。



知ってる温もりも、涙が溢れる。



「進くん………っ」



私の涙は、止まらない。


「本当、カンナは泣き虫だな。

いない時泣くなよ。

涙、拭ってあげられないだろう?


この涙を拭うのは………」


そう言い長い指が、私の涙を払う。



「俺しかいないよな」


君が笑う。

君が生きてるーー。


< 79 / 154 >

この作品をシェア

pagetop