**零れる涙**

腕の傷ーーー

母親が腕捲りをして、キッチンに立つ姿を見たら不意にある腕の傷に目がいった。


「お母さん、その傷古いね。

どうしたの?」


「あー、これ、昔切っちゃって」


今、動揺してなかった?

気のせい?


「あ、そう言えば今年はお父さんの墓参り行けるかな?
おばあちゃん家にあるんだよね」


私の父親は、亡くなっていない。


父親の墓は、田舎暮らしのおばあちゃんの家の近くにあるらしい。

毎年墓参り近くになると、お母さんの仕事でいけない。

気になっていた。

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