同居人は恋愛対象外。
「廉……机の上の薬取って……。」
バイトから帰ってくると母さんが苦しそうにお腹を抱えてしゃがみこんでいた。
慌てて薬を取り水と一緒に渡し体を支える。
もう何回も同じような光景を見たけど、どうしても慣れることなんてできなくて胸の奥がザワザワうるさい。
痛み止めの薬らしいけど、最近薬を飲む感覚が短くなってる気がする。
だから余計に母さんが居なくなるんじゃないかって、心配になる。
母さんは俺と居るために自宅療養を選んでるけど、辛くて仕方ないはず。
俺のせいで母さんが苦しむのは見たくない。
「母さん…入院しないの?」
落ち着いた母さんを前に思い切って聞いてみる。
「いいのよ…入院したってもう長くないもの。
どうせ居なくなっちゃうなら最後くらい幸せな気持ちでいたいの。
廉を傷つけちゃった分、残りの時間を幸せで一杯にしてあげたい……。
って廉にとっては自分勝手な母親に見えちゃうわね。」
「……っ…。勝手に死ぬとか決めつけんな。」
死ぬ準備はとっくにできてるみたいな母さんの言い草に大きな悲しみと少しの怒りが入り交じる。
やばい、涙出そう。
少しずつ元に戻っていく生活に病気と言う大きなものが影を落とす。