同居人は恋愛対象外。
『一命は取り留めましたが。眼が覚める保証はありません。
おそらく今日の夜が山場でしょう。』
病院に着き処置を終えた担当医が淡々と言ったその言葉に言い返す事すらできなかった。
酸素マスクをつけ頭には包帯を巻かれ点滴に繋がれた母さんを見て、ただ泣くことしかできない自分の無力さに腹が立つ。
それと、母さんとの別れが目前に迫っている恐怖も感じる。
お願いだからもう一度母さんと話がしたい。
ベッドの側で母さんの手を握りただひたすら待った。
握ったその手は温かくて、包帯や酸素マスクがなければ気持ちよさそうに眠ってるようにしか見えない。
「死ぬなよ………。」
だから余計に母さんの死なんてものが受け入れられなくて握った手に力が入る。
「廉……いた…い。」
か細く微かに聞こえた母さんの声に俯いた顔を勢いよく上げた。
「母さん!?……よかった…。」
俺を見つめる母さんの目には涙が浮かび、溜まっては筋を作って落ちていく。
「………ごめんね。……」
ゆっくりと優しく俺の頭を撫でる。
母さんの今にも消えてなくなりそうな声に涙が出そうになるのをグッとこらえた。