♥バレンタインの奇跡♥
少し歩くと、結人くんは立ち止まった。
クルリとこちらを振り向き、向き合う形に。

…っ。

恥ずかしくてつい目をそらしてしまう。
チラッと向こう側を見ると、永久子さんがそわそわとこちらを見ている姿が目にはいった。

…!

落ち着かない…。
そんな見ないでよ…!


「彩乃さん」

「は、はいっ!」

結人くんに名前を呼ばれ、ビクッと体が震える。


真っ直ぐ見つめられ、顔が熱くなる。
目をそらせない…。


さっきまでどん底で、物思いにふけっていたのに…今私は結人くんの目の前に立ってる。
急展開すぎて、気持ちが追い付かないよ…。



トクン、トクン。
心音が緩やかに耳に響く。
バクバクしてるのとは違う、穏やかで熱い鼓動。

多分、たったの数秒間。
結人くんが口を開くまでの時間が永遠のように感じたけど、実際はほんの一瞬で。


頭の整理、心の準備もままならない内に、次の瞬間、その言葉が私のもとへと届く。







< 299 / 307 >

この作品をシェア

pagetop