クールな先輩のドジな時


「いいよ、別に。僕も放課後に本が読みたいから来てるようなもんだし」

麻子の挨拶がわりのお礼に、先輩はそう答えた。


小林先輩は、一つ上の先輩であまり感情を表に出さないタイプの人だ。

でも、案外話しやすくて本の話題で時々盛り上がることもある。
そんな時の先輩は少年みたいだ。
色白で顔がかっこいいのもあってドキドキしてしまう。




「あの…、先輩は最近どんな本読んでるんですか?」

先輩はカウンター越しにいて、絶妙に読んでる本が見えない位置にあった。

今まで読んだ本の話はしても、最近何を読んでるのかは知らなかった。




「あー…、秘密」


「秘密って?」


「渡瀬には教えない」



一瞬、秘密が本のタイトルかと思った。
まさか、教えてくれないとは…。




「えー…、何でですか?」



「…ドン引きしそうだから」

< 2 / 10 >

この作品をシェア

pagetop