クールな先輩のドジな時
「いいよ、別に。僕も放課後に本が読みたいから来てるようなもんだし」
麻子の挨拶がわりのお礼に、先輩はそう答えた。
小林先輩は、一つ上の先輩であまり感情を表に出さないタイプの人だ。
でも、案外話しやすくて本の話題で時々盛り上がることもある。
そんな時の先輩は少年みたいだ。
色白で顔がかっこいいのもあってドキドキしてしまう。
「あの…、先輩は最近どんな本読んでるんですか?」
先輩はカウンター越しにいて、絶妙に読んでる本が見えない位置にあった。
今まで読んだ本の話はしても、最近何を読んでるのかは知らなかった。
「あー…、秘密」
「秘密って?」
「渡瀬には教えない」
一瞬、秘密が本のタイトルかと思った。
まさか、教えてくれないとは…。
「えー…、何でですか?」
「…ドン引きしそうだから」