だったら俺にすれば?~オレ様御曹司と契約結婚~

 顔色がよく見える、ピンク色のノースリーブブラウスにカーディガンを羽織って、紺色の膝上ギリギリのフレアスカートを合わせている。いつもよりだいぶフェミニン寄りだ。

 毎朝丁寧にブラッシングしている栗色の髪は、肩を覆うくらいのふんわりセミロングで、輪郭はほんのちょっぴり丸い。顔立ちがおっとりしているせいか、癒し系と言われがちだが、家族からは〝ぼんやりタヌキ〟と、辛らつな評価を受けている。

「このまま男友達ひとりできなかったら、お見合い結婚ルートなんだから……頑張らないとっ……!」

 トイレでひとり、グッとこぶしを握る。

 お見合い――それが玲奈が合コンを繰り返す理由だった。

 過保護の両親や既婚者の姉は、生まれてこの方、彼氏どころか男友達すらいない玲奈に、『苦労しなくていい相手を見つけてあげる、だからお見合いしなさい!』と、うるさいことこの上ない。

 大学を出たあたりからそんな話は出ていたが、先日二十七歳になってから、その攻撃は激しくなり、先週は、いよいよ見合い写真まで持ってきたのだ。
 エリート銀行マンだとか、どこかの企業の三代目だとか、次から次に写真を並べられ、家族の本気を知った玲奈は、戦慄した。


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