だったら俺にすれば?~オレ様御曹司と契約結婚~

(どういう意味だろう……すでに敗北色が強いから、気にするなって言われてるのかな)

 友人の気づかいに苦笑しつつも、淡いピンク色のリップを塗り直す。

 にっこり笑うと、鏡の中の自分も笑顔になった。

「美人ではないけど、愛嬌はあるわよね……うん」

 友人や家族からは、玲奈の笑顔を見ると、ホッとすると言われることもある。
 それに、自分だって、悲しい顔をしているよりも、いつも笑っていられる自分でいたいと思っているのだ。

「よし、最後にもう少しだけ、頑張ってみよう! せめて誰かと連絡先を交換するぞっ!」

 玲奈は、どうにか明るい気分になれたことにホッとしながら、バッグを持ってパウダールームのドアを、やる気に満ちた、清々しい気分で開けたのだが――。

 パァン!

 その瞬間、乾いた破裂音がして、

「ひっ……」

 玲奈は足を止めて、持っていたバッグをその場に落としてしまった。

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