王子は冒険者になる!


アレッサンド様の私室・・・
どうぞ、と促されるけど、入室していいんだろうか・・・。
戸惑っていると、
隣の騎士が優しい笑顔で「大丈夫ですよ。」とささやいてくれた。

や、やさしい騎士だなぁ。
さすが第一王子専属。

初めて入ったけど
思った以上にこざっぱりしていて きらびやかな王宮のイメージと
違うなぁ。
アレッサンド王子の趣味だろうか。


「えぇと、ラディゴール君?
 保護の術は使える?」
「あ、はい。初級ですが使えます。
 えぇと ラディと呼んでいただいて構いません。アレッサンド様。」

アレッサンド様は ふっと 笑う。
あぁ、普段では見れないような柔らかな笑みだなぁ。
これだけで 淑女たちが騒ぐなぁ。


「ふふ。わかった。ラディ君。じゃあ、術を自分自身にかけて。
 騎士マウテン、ラディ君に上級の保護をかけて。」

後ろに控えていた騎士が軽くうなずいて
僕の体に 術をかける。

お、おもいっ。

ずーん。と少し体が重くなる感じがして
術がかかったと認識した。

ふと思い出す。
そうか アレッサンド様は「黒の魔力」
魔力を吸収する性質だ。

「悪いね。王宮の自室だと気が抜けちゃって
 君の魔力を吸っちゃうかもしれないし。
 制御の魔石も 卵も 寮においてきちゃったからさ。」

卵?卵ってなんだろう。
アイテムの一つだろうか?

「いえ、その。構いません。
 あの、どうして・・・」

僕をさそったのかな・・・

「ふふ。まぁ お茶でも飲んで。」

いつの間にか来たのか、
侍女が暖かな湯気が立つティーカップを置く。

一緒に運ばれてきた一口サイズのサンドイッチ
おいしそうだなぁ。

進められるままに頂いた。おいしいぃ。
さすが 王宮だなぁ。

「ふふ。ラディ君は顔に出やすいなぁ。
 素直だから フランも気に入ってたのかな?」
「え?そ、そんなことは・・・」

僕は、急に悲しくなる。

「あの、いえ。気に入っていってもらってたら、
 今回の逃亡も 相談・・・されていたでしょうし・・
 あの、いつも「従者」の役目なんて求められなかったですし。」

アレッサンド様は驚いたように 僕を覗き込んでから
ふふふ、と 笑った。

「あぁ、「気に入られてたから」じゃないかな?
 だから、従者としての君を求めない。
 フランは、君と友達になりたかっただけじゃないのかな?
 従者と主人 じゃなくてさ。」
「お、恐れ多いです。
 立場も身分も・・・違いますので。それに僕は公爵家の出と言っても
 能力も低い三男ですし、あの、・・・はい。」

そう、なんだろうか。
あぁ、でも確かに「フランとよべば?」とか「友達になればいい」とか言われてたけど 本気だったのかなぁ。いや本気で言われてもさすがに呼び捨ては・・・。

「フランは 気に入らないやつを近づけないよ?」

気に入ってもらってたのかな。
だと、うれしいけど。

アレッサンド様はにこりと笑う。
あぁ、やっぱり兄弟だなぁ。笑顔の作り方が似ている。
魔力がキラキラと はじけて 輝いているから フラン様のほうが
綺麗だとか「光の王子」なんて呼ばれるけど
アレッサンド様の落ち着いた 雰囲気と笑顔は 
十分 魅了される 綺麗な笑顔だなぁ。なんて 思わず観察してしまって
僕は、あわてて誤魔化すようにお茶を飲んだ。

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