王子は冒険者になる!




「あぁ。面倒だな。
 なぁ、コレはやらなくてもいいんじゃないか?」

「フランチェスコ王子!
 これくらいはやっていただかないと・・・」

講師はバシンと机をたたく。
そして、お決まりのセリフだ。

「っ、たく。
 アレッサンド王子はこの年にはこれくらい できていましたよ。
 まったく、フランチェスコ様にはできないんですね。」

「できないっていうか・・・不思議?」

「何おっしゃてるんですか?!それでも王族ですか?!
 大体 王子は・・・」

ジョイルは フランチェスコ王子と講師のやり取りをみて
いつものが始まった。と 小さくため息をついて
渡されている問題用紙に目を通す。

正直、難しい。

ジョイルもそれなりに高等な教育を施されているし
問題をきちんと解かないと、寒空で鍛錬とかあるから
必死で勉学に取り組んでいた。
それが 義兄弟には目障りなようだったが、
同世代の勉学にはついていける自信もあった。

ただ、王子の解く問題はそれ以上に難しい。

算術であっても、計算式自体は
そんなに難しくないが そこにたどり着くまでの問題文の言い回しが
難しいのだ。まるで、わざと、間違えさせようとしているかのような
いわゆる『ひっかけ問題』ばかり。

と、顔をあげて
ふと 違和感に気が付いた。

きゅっと意識して王子を『見て』みる。

フランチェスコ=****=ルアーニル(9・・・・24)

ん?年齢が・・・つながって?
なんだか 溶けているように見える。
溶けている?つながっている?

なんか、不思議だ。

王族だからかな?とおもって 不敬ながら『王』や
第一王子も 『見て』みたが、そんなことはなかった。
名前と年齢 だったから、
この不思議な表示はフランチェスコ王子だけだ。


「なぁ?ジョイルも、不要だと思うよな?」
「・・・急に、巻きこむのはおやめください。
 僕は・・与えら得たものをやるだけ、です。」

ちぇー、と口を尖らしたところで
講師から「王子!マナーと言葉づかい!言いつけますよ!」

と、お叱りを受けて びしっと座りなおした。

ちらり、と王子の問題用紙をみると
きちんと答えが記入されているものの、
問題文の多くを 線を引いてあった。
難しい、言い回しが不要だといったのか・・・とジョイルは気が付いたが
怒っている講師には 告げなかった。



「「ありがとうございました。」」

やっとおわったー、と フランチェスコ王子が伸びをしたところで
講師と入れ違いで、入口のほうには騎士が入ってきた。
新しく護衛についた、と言っていたやつだろうか。

じっと『見て』見る。
騎士ビラットね。火の系の剣士かぁ。攻撃魔法も強そう。
でも、繊細な細い魔力をしているから・・・
守りの術を極めたら強固な『結界』を張れそうなのになぁ。

魔力の質的には、隣でにこにこしているピンク色の髪の
騎士フィロスのほうが火の攻撃魔法は強いだろう。

細かい情報は見えない。
見えないような術を施してある。

王宮で働くもののほとんどは
ジョイルの力では見れないほど力が強い。
自分の情報も 隠せるくらいの力がある。

しかし、それだけでも十分な情報である。


「ジョイル。来週の式典にくるだろ?」
「・・・10歳の お披露目・・・ですね?
 おめでとうございます。リザマート家からは義兄が参加いたします。」

「なんだよ。こればいいのに。」

思わず、苦笑い。

義兄を差し置いて 参加できるわけがない。

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