王子は冒険者になる!
どうやら、側近候補のマーカーに
剣の授業のときコテンパンにやられて
いじけているらしい。
あぁ、マーカーといえば剣術での名門ランスラット卿の
子息じゃないか。
フランが簡単に勝てる相手じゃないな。
「ま、散歩がてら
見つけたら 戻るように言っておくよ。」
「お、お願いします!」
フラン仕えの侍女が頭を下げて
足早に去っていく。
さて、散歩がてら
声をかけようかな。
「・・・アレク様。
ほおっておけばよろしいのでは?」
「そんな嫌うなよ。サントス。
一応、僕の弟だぞ。僕がいなくなれば、フランをよろしくな?」
「・・・冗談でもおやめください。」
冗談ではない。
黒もち。だからな。
魔力に黒が混ざると、
成長に伴い 魔力がどんどん 大きくなる。
その
魔力に飲まれてしまい、精神に異常をきたしたり、
そのまま 持ち主を中心に魔崩壊と呼ばれる大爆発を起こしたり・・・
つまり「黒もち」は いつ死んでも、いつ討伐されてもおかしくない存在。
実際、魔力を抑え込めなくて
暴走した魔力で側近であるサントスを何度も傷つけた。
サントスは 青の『水系』の魔力だが、
魔力を抑え込むのがうまいからな。
でも、
いつか、魔力が押さえつけられなくなったら・・・
「いかがなさいましたか?」
「・・・いや、なにも」
『討伐対象』になったらとどめはサントスにして欲しい。
っていったら
また眉間にしわを寄せて 睨まれるんだろうな。