王子は冒険者になる!
セリィは静かに
僕をみつめて一言。
「・・・お慕いしております。」
とつぶやいた。
「・・・うん。
分かった。」
・・・ってわかったじゃねぇよ俺!
でもな、でもな、
そんな静かに泣くもんじゃないよ。
10歳ってまだまだ小さいな。
でも、そんなこと言ってられないよな。
1つ年上のセリィは俺より頭一つ大きいが
ぐいっと引き寄せて、背中をぽんぽん。
離れたところで見ている侍女たちが
ひっと 息を吐いたが ほほえましく見守ってるようだ。
わるいな、そんな色っぽい話をしてたわけじゃないだよなー。
よし、牛乳のもう。
やっぱり、背が高いほうがいいよな。
俺は、ふわりとセリィを離して、じぃっと彼女を見つめる。
すこし落ち着いただろうか?
「セリィ。僕では君を幸せにできないかもしれない。
かといって、王家の方針を無視してでも『婚約破棄』とかいうことも
お互い、難しいだろう。
だから、僕が全面的に悪いってことで『解消』にしよう。
それだったら、セリィを悪評から守れるだろう・・・」
「フラン様。私は貴方を・・・」
「うん。セリィ。「愛している」や「好き」だという感情だけでは、
僕が「フランチェスコ王子」ではなく「フラン」になったとき
君を『守れない』わかるか?」
「・・・。ふらん、様?」
俺が王子をやめて、世界を旅する!なんて言い出したら
彼女は幸せになれないだろう。
彼女は、この「貴族」という生活の中でこそ
輝いて泳げるのだと思う。
彼女に平民の暮らしは似合わないな。
このあわい初恋はあきらめてもらって
幸せな政略結婚をしていただきたい。
だって、
セリィは美人だし、いい子だと思う。
「・・・僕からも父である王には、
伝えておくよ。」
「・・・フラン様?」
にこり、と 意識してきれいに笑ってみる。
そのまま、くるり と身をひるがえして
庭を後にした。
悪いなぁ、セリィ。エスコートもせず置き去りにして、と少し心が痛む。
もちろん、控えていたセーラが何事か、エスコートしてお見送りを
といったが、「うるさい」と一言だけ残して
部屋へと下がった。
罪悪感で 夕食もとらなかった。
うわぁ。申し訳ないなぁ。セリィ。
でも、これは、仕方ない・・・俺のわがままだ。