王子は冒険者になる!
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セリィの父である
モンレ公爵は、この国の宰相である。

寡黙で、多少強面であるが
迅速な書類処理能力と、指示の的確さで
派手な活躍こそは無いものの、王の右腕として信用の厚い男だ。

魔力も高く、攻撃魔法こそ不得手だが、
迅速な雑務の処理能力や
人事の采配に長けており、
王家との遠縁にあたるが身分だけではなく、実力者としての地位も評判も高い男だ。


その男が、たった10歳の
第二王子のフランチェスコに憤怒していた。


彼は、いわゆる『親ばか』だ。
男だけ3兄弟だった子供の中に、
少し離れた娘。それがセリィローズ。
第二王子のフランチェスコの、許嫁だ。

愛らしい容姿も相まって、
彼女は両親、兄からも溺愛されてそっだった。

ただ、我がままというわけではなく
純粋培養で、素直で心優しい天使である。と父であるモンレ公爵は本気で思っているのだ。




「・・・私の天使はまだ部屋の中なのか?」
「…はい。旦那様。」

ふぅ。ため息をつく。

月に一度の『面会』の日から
私のかわいい天使であるセリィが、部屋で臥せっているらしい。

あんの、バカ王子が
ひどいことを言ったに違いない。

くそう。

うちのかわいいセリィがどうしても、どうしても
彼の婚約者になりたいの!って言ったから
仕方なく、婚約者にしたのに

泣かす、だなんて・・・言語道断。

一度注意しなければならんな。
なにが「光の王子」だ。
うちのかわいい天使を笑顔にできないようでは
先が思いやられる。


「・・・セリィの様子を見てこよう。」
「…はい。旦那様。」


あの日、初めてセリィが第二王子のフランチェスコと会った日、
微笑むフラン王子の前で
セリィが心を奪われたのがわかった。
見た目しか取り柄がなさそうなフラン王子なんかに
うちのかわいい天使をやれるか!と思ったが
どうしても、どうしても フランチェスコ王子の隣に立ちたいの。
という涙目のセリィに負けた。


セリィが望むなら と 各方面圧力をかけて
半ば無理やりフラン王子の婚約者に押し上げたのは 私だ。

しかし、そのことで苦しんでいるのなら
婚約を破棄してでも・・・



コンコン。
軽くノックをして返事を待つ。
中から侍女が扉を開ける。

「セリィ?」

ピンクと黄色を基調とした部屋の奥。
ベッドにうつぶせになるようにセリィはいた。

「お、お父様。」
無理やりの笑顔が 余計に痛々しい。

「セリィ。」

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