王子は冒険者になる!

タイラーは、びしっと姿勢を正した。
おっと、魔力が高まっている?緊張して・・る?

なんで?
あ、俺か、別に、怒るわけじゃあないけど。

「騎士タイラー。
 今度のジゼの持ってきていた視察があるだろ?
 僕、個人的に行きたいところがあるんだ。
 抜け出したい。
 協力、出来るか?僕のーーー『幻影』で皆を誤魔化してほしいんだ。」
「っ!!フランチェスコ王子・・それは・・・」

やっぱり無理かなー。
俺を守るのが仕事だしな。

「王子、なぜ、私に?」
「あぁ、そりゃぁ、いちばん騎士タイラーが城下町に詳しそうだし、
 なにより真面目だが、固くない。
 まぁ、騎士ビラットは『責任』が重いだろうし、
 ジゼはまだ僕に付いたばかりだ。

 タイラーは幻影の術って・・・使えるのか?」

タイラーは深い緑の髪の毛だ。
たしか、魔術のじーちゃんが 騎士タイラーは操作系の術が得意で
幻影や陽炎とか そういう視覚操作もできるって
言ってたんだよな。

「・・・はい。フランチェスコ王子。」
タイラーは静かにつぶやいた。
「あ、ごめん・・
 別に、無理にとは・・・」

「いえ、その。」

コンコン。

不意にノックが響く。「フランチェスコ王子。」
ジゼだ。
「あぁ、どうぞ。」と俺が返事を返すと
ドアがカチン、と引っかかってとまる。
あぁ、結界か。

キュイィィと結界が軋む。
タイラーがあわてて、解除にかかる。
俺には知らされていないけど
魔力の繋ぎ目みたいなのがあってそこに 逆流させるように魔力を流すと結界が解除されるらしい。まぁ、知ったところで俺の魔力ごときで解除出来るかは怪しいな。魔術師のじーちゃんに、やっと少しは出来るようになってきたな、と言われたばかりだし。


「騎士タイラー、解除できたか?」
「あ、はい、もう少しです。」
頑丈すぎるだろ。

「ふ。守っているのか、
 閉じ込めているのか、わからんな。
 騎士ビラットは相変わらず「過保護」だな。」

ぱちん、と小さな破裂音がして扉が開いた。
「お待たせしました。ジゼ様。」
「あぁ、騎士タイラー。
 ・・・騎士ビラットは?」
「所用で。」
「そうか。・・・フランチェスコ王子、お待たせしました。
 先ほどのスケジュールと地図です。
 二部もなんにお使いで?」

「あぁ、一つは僕の分。
 1つは・・・」
ちらり、とタイラーを見つめる。
どうにか協力、お願いしますよ!

という祈りを込めてジゼとタイラーに向かって
にっこり 笑顔を返した。

「もう一つは、秘密だな。」

ジゼは思いっきり眉間にしわを寄せた。
タイラーも思いっきり戸惑いの表情を見せた。


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