王子は冒険者になる!



騎士タイラーは「俺を信じて協力してほしいんだけど出来るか?」と
主である フランチェスコ王子に聞かれたときは
びくっと 背中からぶわっと汗が噴き出た。

「騎士タイラー。
 今度のジゼの持ってきていた視察があるだろ?
 僕、個人的に行きたいところがあるんだ。
 抜け出したい。
 協力、出来るか?僕のーーー『幻影』で皆を誤魔化してほしいんだ。」
「っ!!フランチェスコ王子・・それは・・・」

ーーーな、何言ってるんだ?
あまりの申し出に タイラーは焦る。
幻影で、誤魔化せ?
貴方を、守ることが使命なのに それを疎かにしろと?

それとも、試している?
信用できる「騎士」かどうか。


「王子、なぜ、私に?」
「あぁ、そりゃぁ、いちばん騎士タイラーが城下町に詳しそうだし、
 なにより真面目だが、固くない。
 まぁ、騎士ビラットは『責任』が重いだろうし、
 ジゼはまだ僕に付いたばかりだ。
 タイラーは幻影の術って・・・使えるのか?」
「・・・・はい。フランチェスコ王子。」

なぜ、知っているんだ?
・・・俺が隠れて 城下町で女の子と遊びがてら情報収取してるのを。
騎士ビラット様にもばれてないのに。
どこかで『幻影』で変装したのを見られた?
いや、そんなことはないはずだ。

「あ、ごめん・・
 別に、無理にとは・・・」

「いえ、その。」

その時、ジゼ様が返ってきた。
カチィンと 結界が軋む。
あぁ、ビラット様の結界、解かなきゃ。
結界の解き方は『鍵』さえ決めておけば簡単だ。

鍵は三か所。
つなぎ目のようになっていて
それぞれ違う魔力を注ぐ。
「騎士タイラー、解除できたか?」
「あ、はい、もう少しです。」
あと一つ。
魔力を注ごうとしたとき
フランチェスコ王子が ぽそりと つぶやいたのが聞こえた。

「ふ。守っているのか、
 閉じ込めているのか、わからんな。
 騎士ビラットは相変わらず「過保護」だな。」
呆れたように、あきらめた様に、小さく笑った。

・・・っ。

なんだか、胸が熱くなる。

なんだか、泣きたくなる。

ジゼ様からもらった 地図を握りしめた フランチェスコ様が
にっこりと笑う。「もう一つは、秘密だな?」

ぐっと、 なんだか いろんな感情が込み上げるが、
絶対に、絶対に 彼を守る。
そして、彼の、望みをかなえよう。

そんなことを決意するのだった。

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