王子は冒険者になる!
ふと、
周りが一瞬冷える。
そこに目をやると、あぁ、何だっけ・・・
淡いブルーの髪をなびかせて
少し、キツそうな ネコ目のあの令嬢・・・・
彼女が手をかざして 丸いブルーの球体を作る。
それの中がぐるぐると水が渦になる。
おぉ。すげぇ。
高濃度の魔力が注がれてる。
それをぶつけるのか、と思ったら
勢いよく空へと投げた。
ぶわっと 一気に 空に放たれたソレは
ぱりんっ と割れる。
「「「わぁ・・・」」」
ため息があちらこちらで漏れる。
すごい。
ぱりぃーーーん とわれたそれは
雨のように降り注いで、
雪のようにきらめいて
桜吹雪のように 静かに、煌いて落ちる。
「さ・・さすが、ソフィア=レストン男爵令嬢ですね。」
「ラディ君、知ってるの・・・?
---ん? あ、 あぁ、そういえば・・・」
前に『お茶会』にもいたな。
アレク兄様が言っていたーーー不思議な子か。
「その、同世代の中では 群を抜いて 魔力を持っています。
あの、その、魔力量だけではAクラスかと思ったんですが・・・
たぶん、筆記が いまいちだったんじゃないかな、と。」
へぇ。
っと、俺の番か。
「フランチェスコ第二王子。
攻撃魔法をなさいますか?」
「いいえ。先生。
拡散魔法を。」
ペンと紙をとりだすと
若干 まわりがざわつく。
なんだよ。
魔力が安定してないから別に
書いて発動させてもいいだろ。
値踏みされているかのような視線。
明らかに、『まだ書いてるのかよ』『大したことないんじゃない?』
なんて、声も聞こえる。
わりーな、俺 耳がいいんだよね。
好奇心というか、「フランチェスコ王子」の価値を
見てやるっていう、視線が注がれる。
わーお。慣れてるとはいえ
敵意の混ざる
視聴率100%のこの状況はやっぱり居心地が悪いな。
そんなことを思いながら
書いた魔法陣に魔力を通す。
さらりと 俺 自慢の金色にも銀髪にも見える髪がなびく。
書かれた魔法陣がぱぁぁあ・・・っと光って
そこから、光が空に向かって一直線に・・・
ひゅるるるる~~~~~
どかっーーーん!!
俺の自信作、ザ・花火 だ。
光の魔術に火を少し足して、
見事に空中に花を咲かせた。
いいな。
俺、いいセンス。
自画自賛しよう。
「おぉ。きれいに咲いたな。」
うわぁ。とか あぁ、きれい、
なんて声も聞こえるから まぁ、評判は上々かな。
「まぁまぁ。綺麗な花火ですねぇ。」
小さく、ぽそり と
つぶやいた声に
俺は 驚いたように、振り向いた。