王子は冒険者になる!



***



*******




「落ち着いてください。
 父上。私は、フランを信じておりますから、きっと彼は無事でしょう。」

「そ、そうか・・・」

「フランのことは、騎士たちにお任せください。
 ねぇ?モンレ宰相殿。」

父である王の隣に控える 宰相である
いかついおっさん・・・失礼、モンレ宰相に視線を向ける。

モンレ宰相は しかめっ面でひとつ頷いた。



弟であるフランが『逃亡した』といって
あの、次の日 王宮から緊急帰宮の連絡がきた。


遅かったなぁ。
フランはとっくに旅立ったよ。

と思ったが、『誘拐』という可能性もあったので
手間取ったらしい。

母も心労で休んでいるらしい。

おいおい、フラン。詰めが甘いなぁ。
母に、心配しないでください。ぐらいの手紙を書置きして逃げろよなぁ。
フランが残した 手紙は一通。
父である王にあてた物だった。

すべて、僕が悪いのです。
という謝罪のもとですべての第二王子付きである
騎士や側近、侍女に至るまですべての者への
責任の不問や 再就職の斡旋の願いが書かれていた。

それが見つかったのが
今朝がたらしい。

何重にもロックされた箱の中
『親展』魔法がかかった封筒。

親展先は 王。

それが『逃亡した』という決定的な証拠になったわけだ。


ちらりと 僕についている護衛騎士たちに
フランの騎士たちの様子を聞くと、
責任を取って クビ・・・ってことはないが街やあちらこちらに
フランを探しに出ているらしい。

王宮にある 
アレッサンド第一王子用の自室に戻ると、
サントスが「お帰りなさいませ」と言って 僕のジャケットを受け取る。

「ん。やっぱり 
 正装は肩がこるな。なぁ、リュウ。」
「お気づきでしたか。」

窓のカーテンが ゆらり、と揺れて そいつは現れる。
僕の『影』であり、裏でサントスとともに守ってくれるもの。

「で?フランの様子はどうだ?」
「んふふ。面白い子ですねぇ。
 あ、仮にも王子に言うセリフじゃないんですがね。
 まず 現状ですが 無事に朝一番に王都を出て
 歩いて 海辺の町 セシュラーシカに向かうそうです。
 そこで住み込みの仕事を見つけて
 しばらく過ごしたい とのことです。」

「ん?ずいぶん 詳しいな。」

「えぇ、歩き始めて数秒でオレに気づいちゃいましたから。
 だから、直接 何処に行くつもりか聞いてみましたよ。」

「え?影であるリュウに?」

「才能 ですかねぇ。たまにいるんですよね。
 隠ぺいの魔力を察知しちゃうヤツ。 
 で、ちゃんと連絡するから 兄様にありがとうって伝えて と
 伝言 賜ってます。」

思わず、苦笑。
サントスも 困った顔をした。

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