恋のかたち。〜短編集〜
嶋村大樹の想い
部活が終わり、忘れ物に気づいた俺は教室に来た。
教室に入ると誰かが机に突っ伏していた。
でも、すぐに永島楓(ながしまかえで)だとわかった。
「おい、また振られたのか」
と、自分でも無神経だと思う言葉をかけると、楓は顔を上げた。
そして、何も言わずにカバンを持ち、教室を出ていこうする。
いつもそうだ。
俺に相談して、告白しては振られて、泣いて。
そのくせ、振られたことは後になってから、無理して笑いながら報告する。
でも、笑いながら心で泣いていると俺にはわかる。
「おい、待てよ」
そんな声を気にもとめず楓は俺の前を通り過ぎようとした。
だから、俺は咄嗟に楓の腕を掴んで、抱き寄せた。
すると、楓は思いっきり俺の腕の中で泣きはじめた。
俺は何も言わずにそっと抱きしめていた。