恋のかたち。〜短編集〜
俺が、楓に初めて出会ったのは、小学5年生のときだった。
夏の1週間だけ、俺の家の前の公園に来ていた女の子。
それが楓だった。
楓は1人で砂場でしゃがみ、遊んでいた。
『なまえなんていうの?』
俺はそう声をかけた。
『かえで。きみは?』
と言って女の子は下を向いていた顔を上げた。
その顔を見たとき、俺は一目惚れしてしまったんだ。
『…たいき。しまむらたいき』
それから、1週間だけおばあちゃんの家にきているということや、楓が住んでいるところの話などをした。
1週間が経ち、小学生だったから、連絡をするすべもなく、俺は中学生になった。
俺はSNSを使って探したりしたが全く見つからなかった。
そして、忘れかけていたとき、楓を見つけた。
高校1年生の春だった。
親友がなにやら、可愛い子がいると言っていた子が、楓だったのだ。
苗字は知らなかったが、すぐにあの楓だとわかった。
俺はサッカー部に入ったのだが、偶然その後すぐに楓がマネージャーとなった。
俺はチャンスだと思った。
楓は可愛いから先輩からも同級生からも人気だった。
だから、俺はあえて、そういう目的で接していないよというように接して仲を詰めて行った。
家へ帰る方向も偶然同じで一緒に帰ることもしばしばあった。
そうして、俺は楓の友達、いや仲のいい友達になった。
恋愛相談があると必ず乗った。
人間関係も。
2年生になると俺と楓は同じクラスになった。
より仲は深まったけど、楓はなかなか俺をみてくれていなかった。
今日は先輩に告白すると言っていたから、きっと告白して、また振られたのだろう。
でも、わからない。
こんなに楓は可愛いのに振られる理由が。
性格も良い。楓の何がダメなんだ。
俺には、全くわからなかった。