恋のかたち。〜短編集〜
正反対
「まる!お前、直人はマジでやめとけって!」
そう言ったのは幼馴染でバスケ部の山城桃矢(やましろとうや)。
“まる”とは、私のあだ名で、本名は丸山玲(まるやまれい)。
バスケ部のマネージャーをしている。
部活後は、きまって桃矢と帰っていて(方向が一緒だから)いつも恋愛や友達関係など色々と相談にのってもらっている。
幼稚園からの幼馴染である桃矢には何でも言えたから。
だが、桃矢も思ったことは何でも言ってくるので、こういう口論のようなものになることはたびたびある。
今は、後輩である間那直人(まななおと)が最近気になっているということを帰り道桃矢に相談している最中だった。
「は?!そんなにチャラチャラした桃矢に言われたくないし!」
「お前のためを思って言ってんだろ?」
「そんなの、私に先越されたくないからでしょう?」
桃矢はお世辞無しにイケメンで、女の子の扱いも慣れているし、チャラいのに、付き合ったことないというのには、理解し難い。
好きでもない人とは付き合わない主義か、それとも好きな人がいるのか、あるいは特定の人を作らずに遊びたいのか。
「ちげーよ。お前より可愛い女なんて沢山いるから直人が相手にするはずないだろ!」
「そんなのわかってるよ!」
「…全然わかってねぇよ」
「なに?」
「なんでもねぇよ。もう俺は知らないからな」
気がつくともう家の前まで来ていた。
私の家の向かいにある家に入っていく桃矢をみながら、
『心配されているのか?』とも思ったが、
そんなはずはないとすぐに浮かんだ考えを吹き飛ばした。