恋のかたち。〜短編集〜
俺は楓を抱きしめながら思い出に浸っていた。
そして、楓の涙が落ち着いたときに、俺は我に返った。
俺はもう限界だった。
「もう、俺を好きになれよ」
抱きしめながら言った。
そして、楓は、俺から離れて、笑いながら言った。
「ごめんね。」
自業自得だ。
俺は仲のいい友達になるよう務めてきたのだから。
当然の結果だ。
「私、先輩に振られちゃった」
無理して笑いながら続ける。
「何がダメなんだろ」
「ごめん。わからない。俺は、楓が好きだ。だからダメなところなんてわからない」
「ははは。ごめんね。私、大樹のことは、友達としか思えない」
「…わかった。じゃあ、俺、これから楓に好きになって貰えるよう頑張るよ」
と言うと、楓は困ったように笑った。
だから、
「冗談だよ。今まで通り友達でよろしく」
と言った。
これでいい。俺は、これでいいんだ。
これで楓は、気心の許せる友達までもを失わずに済む。
「うん。ありがとう」
と楓はいつものように可愛く笑った。