恋のかたち。〜短編集〜
次の日帰りのSHRが終わり、斉藤に会う前に帰ろうとしていると目の前に誰かが来た。
恐る恐る見上げるとそこには…
「川北先輩?!」
「京子ちゃんちょっといい?」
返事をする間もなく手を握られて旧校舎へと連れてこられた。
「先輩…手…」
「あ、ごめん。痛かった?」
「痛くなかったです。けどどうしたんですか?」
そんな焦った顔をして。
「京子ちゃんって、斉藤と付き合ってるの?」
「え?」
「昨日、教室で、抱きしめられてなかった?」
「…見たんですか?」
「うん、ごめん」
昨日のことを思い出した。
斉藤に返事をしなければならないのだろうか?
「付き合ってはないですよ」
「斉藤のこと好きなの?」
「そんなこともないです」
「そ、そっか…あはは。良かった。」
先輩が壁によしかかって座ったので私もその横に座った。
「でもそれじゃあ斉藤が京子ちゃんの事好きなんだ」
「そうみたいです」
「そうみたいって…」
「昨日、俺のことも見てよって言われたんです」
「それは遠回しに告白してるな」
「ですよね。返事ってするべきですかね…」
「んー、難しいな。あ、彼氏出来たって言えばいいんじゃないかな」
「え?」
「俺のこと“も”ってことは誰かと比べてたんでしょ?誰と比べてたの?」
「それは秘密です。…先輩は好きな人いないんですか?」
「いるよ。隣に」
「…へ?」
思わず間抜けな声が出てしまった。
先輩は真っ直ぐ私の方を見て言った。
「俺ずっと京子ちゃんが好き。だから俺と付き合ってくれないかな?」
夢みたいだった。まさか告白されるとは思ってもいなかった。
「…だめ?」
上目遣いな顔して言う先輩は可愛かった。
「っダメじゃないです!私も!好き!…です」
「やったー!」
先輩は無邪気に笑って喜んだ。
「ねぇ、抱きしめていい?」
「是非!」
「是非ってあはは。じゃ、遠慮なく。斉藤より先がよかったけどな」
先輩は後ろから優しく抱きしめてくれた。
「気持ち的には先輩が初めてなので初めてです」
「キスはしてないよね?」
「もちろんです」
「良かったぁ。ねぇ、名前で呼んでくれない?」
「…たいき。くん」
「今はそれで良しとしよう。これからよろしくね…京子」
「よろしくお願いします!」
「敬語も禁止」
「わかりま…うん!」
「あはは。京子大好きー」
「せんぱ…たかとくん付き合うと変わるね」
「そりゃ変わるよ。だっていっぱいイチャイチャしたいもん。やだ?」
「やじゃないよ。嬉しい」
「じゃあ、帰ろっか」
「うん」
「キスは今度ね」と敬人くんは耳元でささやき、私の手を握ってゆっくりと歩き出した。