恋のかたち。〜短編集〜
「玲先輩部活後ちょっといいですか?」
「ん?いいよー。私ボールの片付けとかあるからそこら辺にいると思う」
桃矢と口喧嘩のようなものをした次の日、間那が部活前に話しかけてきた。
『部活後ちょっといいですか』ってなんだろう。
期待してもいいものか?
その日はいつもより早く部活の時間が過ぎた気がした。
「玲先輩」
「あ、間那?」
「はい、今いいですか」
「あ。ちょっと待ってて」
喧嘩中のようなものだが、一応桃矢には言わなきゃ行けないと思い、体育館を出た先の部室に向かった。
ドアをノックしようとした途端、ドアが開いて、中から桃矢がでてきた。
「あー、帰る?」
「いや、ごめん。先帰って」
「そっか、そうだよな。昨日は…悪かったな」
桃矢は珍しく申し訳なさそうな顔をしている。
「いや、そうじゃなくて」
「ん?」
「間那に呼び出されて…」
「…そうか」
「うん」
「じゃあな」
桃矢は、そう言ってスタスタと玄関の方へ行ってしまった。
「お待たせ」
「玲先輩。あの、俺、まだ入部して3ヶ月も経ってないんですけど、好きになりました。付き合ってくれませんか?」
期待通りだった。良かった。
やっぱり桃矢が間違っていた。
間那が初めての彼氏に。
うん。悪くない。
まだ完全に好きになった訳ではないが、好きになる。
そう直感的に感じていた。
「私でよければ」
間那は「よかったぁ」と言ってはにかんだ。
そしてそのまま間那は家まで送ってくれた。