恋のかたち。〜短編集〜



「玲先輩部活後ちょっといいですか?」


「ん?いいよー。私ボールの片付けとかあるからそこら辺にいると思う」


桃矢と口喧嘩のようなものをした次の日、間那が部活前に話しかけてきた。


『部活後ちょっといいですか』ってなんだろう。


期待してもいいものか?


その日はいつもより早く部活の時間が過ぎた気がした。



「玲先輩」


「あ、間那?」


「はい、今いいですか」


「あ。ちょっと待ってて」



喧嘩中のようなものだが、一応桃矢には言わなきゃ行けないと思い、体育館を出た先の部室に向かった。

ドアをノックしようとした途端、ドアが開いて、中から桃矢がでてきた。




「あー、帰る?」


「いや、ごめん。先帰って」


「そっか、そうだよな。昨日は…悪かったな」



桃矢は珍しく申し訳なさそうな顔をしている。



「いや、そうじゃなくて」


「ん?」


「間那に呼び出されて…」


「…そうか」


「うん」


「じゃあな」



桃矢は、そう言ってスタスタと玄関の方へ行ってしまった。



「お待たせ」


「玲先輩。あの、俺、まだ入部して3ヶ月も経ってないんですけど、好きになりました。付き合ってくれませんか?」



期待通りだった。良かった。

やっぱり桃矢が間違っていた。

間那が初めての彼氏に。

うん。悪くない。

まだ完全に好きになった訳ではないが、好きになる。

そう直感的に感じていた。



「私でよければ」



間那は「よかったぁ」と言ってはにかんだ。


そしてそのまま間那は家まで送ってくれた。


< 3 / 36 >

この作品をシェア

pagetop