恋のかたち。〜短編集〜
真っ赤
私は、大学の食堂で、溜息をついた。
彼氏がまた女の子と楽しそうに話していたからだ。
私といるときは静かなのに。
ヤキモチ焼くのはいっつも私の方だけ。
そう考えていると目の前に彼が座った。
「難しい顔して。何考えてたんすか」
何故か上機嫌の彼が私に聞く。
「別に。何でもないよ」
「…俺って頼りないですか?」
「え?」
「いや、いつも何でもないって言うからちゃんと言ってほしいなーなんて…女々しいですか」
いつも余裕のある彼が少し弱々しく見えた。
「じゃあ聞くけど何で私といるときはそんなに静かなの?いつも女の子と楽しそうに喋ってるくせに」
つい可愛げなく、強くいってしまった。
「それは…」
彼は口ごもる。
もう止まらない。
「私ばっかりヤキモチ焼いて?バカみたい。それとももう好きじゃなくなった?」
「それは!違います!」
彼は、大きい声を出してしまったと思ったのか、1度周りを見てから、静かに続けた。
「俺だってもっと喋りたいしキスもしたいです。でも好きだから、大好きだから無理なんです。俺だってヤキモチ焼いてます。でも、俺が持たないから。俺だって…」
そう言うと彼は「ちょっと来て」と私の腕を引っ張った。
着いたのは誰もいない教室だった。
「ちょっ、痛いんだけ…んッ」
言い終わると同時に
彼は私に初めてのキスをした。
何度も何度もキスをした。
そしてまっすぐ私の目を見てこう言った。
「ほら、俺の顔。真っ赤でしょ?」