恋のかたち。〜短編集〜
その後しばらくは2人とも口を開かなかった。

が、落ち着くと、次は瑠璃香が口を開いた。



「すぐに。すぐに諦めるのは無理だけど、応援。するよ。もう、今度からは何でも言ってよね!」



涙でぐしゃぐしゃになった顔で瑠璃香は、無理やりはにかんだ。



「ほら!早く戻りなよ!なっつ、待ってんでしょ! 」



あ、そうだった。



「うん。ありがと。また明日!」


「うん!」



私が教室へ走り始めると、
「お幸せにねー!!」
という瑠璃香の声が聞こえた。



「奈槻先輩!!」


「おー、おかえりー」



優しくのんきな声で先輩は出迎えた。


「ひっでぇ顔」と笑っている。



「それで、俺と付き合ってくれますか?」


「…はいっ!」


「よし。帰るぞー」



先輩が教室を出たので私もカバンを持って後に続いた。



「あ、そういえば先輩何で教室にいたんですか?」


「あ。忘れてた」



「これ」と言って渡されたのは、今日中に仕上げなければならない資料だった。



「先輩っ!!!それ、やばいじゃないですか」


「うん。ごめん」



先輩はしれっとしている。



「えーーーと、とりあえず、生徒会室行ってから…」


「はい、落ち着いて。俺も手伝うから」


「…もちろんです!!」



それから2人は、いや私は慌ただしく、先輩は呑気に資料を時間ギリギリに終わらせた。



「やっと、終わりましたね」


「ん。じゃあ、今度こそ帰ろう」


と言うので、立ち上がると腕をひかれた。

気づくと私は先輩の腕の中にいた。



「頑張ったご褒美」


「これ、先輩も得してません…?」



先輩はいたずらっ子のような笑顔を浮かべながら、答える。



「あ、バレた?」


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