恋のかたち。〜短編集〜
「ねぇ、私のどこが好きなの?」
何度目かに桃矢の家へ行ったとき、ふと疑問に思ったことを口にしてみた。
「それ聞く?」
桃矢の前に座って後ろから抱きしめられたまま、上を見上げると、桃矢はそのままテレビを見ながら答えた。
3ヵ月経ってもこの状態はなかなか慣れない。
だけど、こうしたいと言い出したのは桃矢で、別に私も嫌いじゃない。いや、むしろ安心する。
だから、桃矢の家に行って、テレビを見る時は必ずこの体勢になっていた。
大きい桃矢にとって、小さい私はちょうどいいらしい。
「だって、おかしくない?桃矢の周りにはたくさん可愛い子いるじゃん」
私もテレビに視線を移して言った。
テレビでは、芸人達が立ちトークをしている。
桃矢も私もこの番組が好きなのだ。
「生まれてからずっと一緒だからなぁ。俺の隣に玲が居ないことが想像出来ないんだよ。いつか離れていくと思うと、耐えられない」
「へぇ。意外にまともだね。私もそんな感じ」
「まぁ、安心しろ。俺が玲のこと好きだと自覚したのは、外見じゃなくて中身だから。いくら太っても問題ないぞ」
桃矢は得意のニヤニヤ顔で私を見下ろした。
「やっぱり最低!」
そう言って立ち上がり、桃矢が背もたれにしていたベッドの上に、壁の方を向いて寝っ転がった。
「何、玲、俺のこと誘ってんの?」
顔は見えないが絶対にニヤニヤしているな、コイツ。
「違うわ。バカ!」
そう言いながらも、頬は緩んでいた。
「はいはい、知ってるよ」
桃矢はそう言って私の隣に寝転んだ。