恋のかたち。〜短編集〜
「それで昨日の帰り聞けたか」
真は次の日の放課後、また柊羽の相談に付き合っていた。
「収穫ゼロだな」
「なんだ。何も聞けなかったのか?」
真は半ば呆れながら言った。
「まぁな。部活で相当面倒なことになっているらしい。そのことをずっと聞かされていたんだ」
大事な話と言ったら彼女も聞いてくれるだろうに。
「そもそも、何で高2になって気づいたんだよ」
「それは…俺にもわからないが、何だかドキリとしたんだ」
「いつ?」
「いつの間にか、だな」
「ふぅん」
言わなかったが、真にもその感じがわかる。
いつも一緒だったのに、急に、緊張するようになった感じ。
行動ひとつひとつに敏感になってしまう。
「そういえば、真。昼休み告白されていなかったか?」
真はドキリとした。みられていたのか。
「まぁ、ね」
「真、本当にモテるよな。でも何で最近彼女作ってないんだ?前まで途切れることは無かったのに」
その通り。
真は中学2年生のときくらいから高校1年の夏くらいまで、好きな人ができるまで、彼女が途切れることは無かった。
「やっぱり好きな人がいるからか?」
「まぁ。今はちょっと休みたいなって。ほら、ひとりがいいときもあるから」
「ほーーー。やっぱり言うこと違いますねー」
と柊羽はおどけた。
それを指摘するのも今はなんだかめんどくさい。
「あ」
昨日と同じくドア前方に相原が立っていた。
真の声で柊羽も振り返る。
「やほ!またふたりでいるんかい!」
明るくハツラツとした声で言った。
部活で声出しているだろうに、よくそんな声が出るもんだ。
「相原はまた何でここに?」
昨日といい今日といい。いや、昨日今日だけでない。最近放課後、柊羽と教室にいると、ほとんどの確率で相原は来る。
「話し声が聞こえたから誰かいるかなって!」
相原の大きな目が少し泳いでいるようにも見えた。
「ふぅん」
「樹菜部活頑張れよ」
柊羽はそのひとことだけを口にした。
「あ!そうだ、部活!ありがとー!」
相原は陸上部さながらの足の速さで教室をあとにした。
「絶対柊羽に会いに来てる」
「そうか?」
「おう」
「真かもだぞ?」
「ないない。柊羽が頑張れよって言った時のあの顔みて、相原の好きな人は柊羽だって俺は確信したね」
柊羽は照れていた。
さすがにもう告白したらいいのに。
真は内心そう思っていた。
「柊羽、俺今日バイトあるからもう帰るな。明日は良い報告待ってるぞ」
真は教室を出てから、気づいた。
明日は土曜日だ。