あなたと私と嘘と愛
だけどそれもわずかな時間。
イルミネーションに気をとられ、写真を撮るのに夢中になっていると、不注意で他の人とぶつかってしまった。
坂井さんと少し離れた時だった。
バランスを崩した私は尻餅をついてしまい、接触した人が慌てて「大丈夫ですか?」と手を差し伸べてくれる。
それが女性なら良かったのだけど、背の高い男の人だった。
咄嗟のことだったけど、その手を掴んでしまった瞬間「亜香里?」と少し低めの声が飛んでくる。
「何やってるの?」
「…え」
素早く腕を捕まれたのはそれからすぐのこと。
強引に引き寄せられた先には無表情の坂井さん。
きっと彼も見てたはず。
だから私はすぐに今起こった出来事を説明したのだけど、彼の表情はたちまち不機嫌になる。
「あの、すみませんでした」
とりあえずぶつかってしまった男の人に謝りその場を離れたけど、彼の言葉は不満となって私に向かう。
「何他の男に触らせてんの?」
え…と立ち止まる。
「僕以外の男に気安く触るのはルール違反でしょ」
そんなルールあったっけ?と瞬時に思ったけど、この言い方だときっと私が他の男性に触れてしまったことが気に入らないのはすぐにわかった。
けど、さすがにこれは不可抗力だ。
そして事故のようなもの。
反論する権利はある。