あなたと私と嘘と愛
「で、でも…わざとじゃないし」
私だって触りたくて触った訳じゃない。
こんなことでいちいち怒られる筋合いはないと思う。
「さすがにこれは回避できないです」
「それは言い訳だよね?亜香里がもっとちゃんと周りを見てればぶつからずにすんだでしょ。亜香里はちょっと無神経すぎるよ」
「は…無神経?私が?」
「僕の気持ちを全然考えてない。考えてたらこんなこと普通はできないよ」
ポカンと口を空けた。
何故そうなる?と思うと同時に彼の言っていることがちっとも理解できない。
ぶつかっただけで…無神経?
「それはちょっと言い過ぎじゃ……」
「でも僕はこんなにショックを受けてるよ」
「は…これぐらいのことで?」
言った瞬間気まずい間ができた。
坂井さんの瞳が驚きに変わる。
だけど本当のことだ。つい本音がポロリ。
私はただ助けてもらっただけ。
それなのにどうしてここまで避難されなきゃいけないのか。
ショックなのはこっちの方だ。
じわりじわり苛立ちさえ込み上げる。