あなたと私と嘘と愛
だってそうしか思えない。
全てにおいて坂井さんの価値観の中で振り回され、それを押し付けられてるだけ。
「こんなの愛じゃない」
「僕の愛を否定するの?」
「だって坂井さんは…、好きならもっと私を信じてくださいよ。今の坂井さんの態度を見てると全然信用されてない気がしてすごく悲しいです」
頑なに縛ろうとしなくても私は離れていかないのに。
こんな風にがんじがらめされたら窮屈になって逃げ出したくもなってしまう。
「坂井さんが分からない」
「じゃあ教えてあげるよ」
彼の瞳が一瞬鋭い熱をもち、素早く手を捕まれた。
近付いた表情はヒヤッとするほど冷ややかで、私を力強く引き寄せる。
「僕がどんなに亜香里を愛してるのか教えてあげる」
凄みのある声に体がびくついた。
あ…と驚いた時、彼はすごい力で私を引っ張った。
「君は何も分かってない」
「坂井さっ……」
そのまま彼の車に乗せられて、見慣れないマンションへとたどり着く。
強い不安に煽られた。
駐車場に車が止まり、そこから強引に引っ張られながら中へ進むと鼓動がバクバクと飛び出そうになる。