あなたと私と嘘と愛
気づいたら彼の部屋の前だった。
ひんやりとする廊下。ダークブラウンの玄関がやけに不気味に見えるのは目の前の坂井さんの行動が分からないから。
(…どうするの?どうなるの?)
強い焦りを覚えたのはこの時まで。
次第にそれすらも考える余裕さえもなくなり、坂井さんがガチャガチャと鍵を開け、扉を開ける。
それを見ながら急激な動悸が私を襲う。
「入って」
「待っ……」
だんだん怖くなってきた。
容赦ない坂井さんの態度。優しさの欠片もない強引さは彼を怒らせてしまったことを物語っていて、これから何をされるのか嫌な方へと想像してしまう。
(もしかしてこのまま…)
だけどガチャリ、乱暴に開けられた部屋は想像していた所ではなかった。
そこにはベッドもなく、テレビもない。
カーテンが下ろされたまま、うす暗い部屋に見えたのは異様な空気を放つ場所。