あなたと私と嘘と愛
(ストーカー…)
それが真っ先に脳裏によぎる。
そして彼は普通じゃないと思ったとき、私の頬に生温かいリップ音がした。
「これで分かってくれたかな?亜香里はね、僕の全てなんだ。だから君への愛は誰にも負けないよ」
嫌だ、気持ち悪いーー…
ようやく分かった。その言葉の重み。
キスをされた所からゾクゾクと今まで感じたことのない後悔が私を襲う。
「亜香里好きだよ」
「ーーー」
やめて、聞きたくない。
一刻も早くここから逃げ出したい。
だけど、今の彼を振りほどく勇気はない。
ただ怖くて、恐怖で足がすくむ。
顔を合わせるのも怖いのに、肩を掴まれ向かい合わされたとき、彼のゾッとする顔が近付いてくる。
「ゃ……」
蚊の鳴くような声が出かかった瞬間ピンポーン!ガチャガチャと玄関の方から騒がしい音がした。
ハッと動きが止まる。
そして坂井さんの顔が不快そうに歪む。
「…誰だ…」
「え……」
玄関の鍵が開いた。
そして躊躇なくなく飛び込んできた人物に私は驚くことになる。