あなたと私と嘘と愛
浅い呼吸を繰り返し、落ち着け落ち着けと暗示をかける。
だけど気分は悪くなる一方で運転手さんにもちらっと怪訝な顔をされた。
「お客さん大丈夫ですか?」
「………はい」
そんな時だった。
再び私の携帯が大きな音をたてた。
ドキッと恐怖が舞い戻る。
もしかして坂井さんからじゃ…、と恐る恐る携帯を見るとそれは違う人物、優斗だった。
ホッと胸を撫で下ろす。
だからすぐに応答へとスクロールした。
「もしも……」
「良かった。やっと繋がった!亜香里今どこ?」
「えっ……」
戸惑いつつ続いた内容に驚いた。
いつにない焦りを含む優斗の言葉に私は何かあったのかと予感した。
そしてそれが現実のものになると私は運転手さんに行き先の変更を告げる。
「ーー総合病院まで」
タクシーを降りるとまた一つ、先程とは違う焦りが込み上げた。
そして夜間用の受け付けを通ると優斗の姿が見えた。
私を迎えに来てくれたらしい。
「こっち」と合図された私は頷きながら近付いた。
優斗と一緒に部屋の前までたどり着くと、息を整える間もなくガラッと扉を開く。