あなたと私と嘘と愛
「お母さ…」
「あらあら、お揃いで」
入った瞬間すぐに立ち止まる。
(…は、あれ?)
聞いていたのと違う。
予想外の元気な反応に目をパチパチとさせる。
「あれ?倒れたんじゃ…」
「倒れたわよ。ついさっきまでね」
いつもの憎らしい笑みだ。
ベッドの上で上半身起こした母の姿はまるで映画から抜け出たような格好。先程優斗からの電話で母が撮影中に倒れたと聞いていたためかなりの拍子抜け。
手首から点滴の管を付けてなかったら、きっと本当に倒れたのか確信できないぐらいだと思う。
「ただの過労よ」
「もう、人騒がせな…」
ふわ…と肩の力が抜けた。
少し立ち眩みまでおき、近くにあった椅子に脱落したよう腰かける。
「最近深夜までの撮影が続いたからねぇ」
「このまま入院するの?」
「まさか、明日の朝には帰るわよ。撮影だってまだ途中なんだから」
なんだ…
まったく深刻では無さそうだ。
心配して損しちゃった。