あなたと私と嘘と愛
(でもなんか痩せた?)
久しぶりに見た母は元々細かった体型がまた更にほっそりしたように思う。
それを指摘したら「今役作り中なのよ」とあっさり言われてしまったのだけど、ふと優斗を見ればそんな母を少し心配した様子で見つめてる。
そして母の手を取った。ベッド脇の椅子に腰かけると何とも複雑そうな顔に変わる。
「仕事も大事だけど、あまり無理は駄目ですよ。この際2、3日ゆっくりしたらどうですか?」
とても優しい声だ。
優斗の気遣いが伝わるものだった。
だけど母は駄目よと言う素振りで顔を横に振った。
「嫌よ。そんなにやわじゃないわ。こんなところに居るより仕事してた方が楽だもの。もしかしたらマスコミだって嗅ぎ付けてくるかもしれないし。ほらわこちゃん、明日の朝一番のスケジュールを確認して」
「え、はいっ」
わこちゃんと呼ばれた女性がビシッと返事をする。
彼女は母のマネージャーだ。
かれこれもう5年以上母の側にいて、スケジュールを細かに管理してくれる。
いつも髪を一つに縛り、眼鏡をかけていて少々気は弱いが人のいい信頼できる人だ。